虎哲の探究

一介の公立中高国語科教員の戯言。未熟者による日々研鑽の記録。

文庫・新書3冊まとめ買い15%オフの夏が来た!

 タイトルの通り。大学生協は普段も書籍10%オフの大変有難い。大学3年の頃にこの祭典を知り、毎年楽しみにしている。今年はラストイヤー(になる予定)なので購入予定の本を紹介したい。

  まずはこの本!

僕らの世界を作りかえる哲学の授業 (青春新書インテリジェンス)
 

  個人探究のベースに「哲学的」討論があることを酒井先生は以下の本の258頁の図で示している。

 「哲学対話」なるものの存在を昨年知り、ぜひ実践に取り入れたいなと思っている。その哲学対話について実践・研究されている土屋先生の単著ということでこれは読まねばなるまいと。

  下の本も読んだが、なかなか重要な指摘がなされているものの抽象的でまだ自分の中に落としきれていないところもあるのでそこも含めて読むのを楽しみにしている。

探求の共同体 ─考えるための教室─

探求の共同体 ─考えるための教室─

 

  この本土屋先生だけでなくモリッシー先生も翻訳に関わっており、どういうつながり!?とシンプルに驚いたという共有したいプチ発見。

 

 

「学校」をつくり直す (河出新書)

「学校」をつくり直す (河出新書)

 

  探究やワークショップについて言及されているということでこの本も読みたい。

  「イン・ザ・ミドル」が参考文献に入っており、どんな扱われ方がされているか見てみたいというのも本を買って読みたい理由の一つ。

イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室

イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室

 

 

  それにしてもこのブッククラブは素敵な学びの場だった。その感動を伝えきれない振り返り記事。もう半年以上も前なのか。

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  そして同じ学年を組ませて頂いている専任の先生から若いうちに読んでおくといいと勧められた三島由紀夫金閣寺

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

 

  幸か不幸か、国語科の教員としては大いに不幸なことに中高大と文学経験の乏しい私にとってお勧め文学を教えて下さるというのは非常に有り難いことである。

 

 以上の3冊で締めたいが、

 

  同じゼミ所属で同期の私と対局なおしゃれ院生お勧めの

花窗玻璃 天使たちの殺意 (河出文庫)

花窗玻璃 天使たちの殺意 (河出文庫)

 

 や

 

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

 

 を読んでかえって全体を読みたくなった

 

 メアリーシェリーのフランケンシュタイン

フランケンシュタイン (新潮文庫)

フランケンシュタイン (新潮文庫)

 
フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

 

 どっちの翻訳がおすすめですか?

 

 

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 この読書会で勧められた平野啓一郎訳の『サロメ』 も読みたい。

サロメ (光文社古典新訳文庫)

サロメ (光文社古典新訳文庫)

 

今 思いつくだけであと3冊は買いたくなっている。貧乏院生の葛藤。

 

 

ブッククラブ・読書会と言えば… 

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 参加希望はお早めに!

 

結局

 6冊買っちゃいました…意志薄弱…。予定通りの三冊と

  普段はシニカルな印象の垣内さんが実に熱量を持って勧めていたことが印象に残っており、尊敬する元院生の先輩が「推し」と読書学会懇親会で言っていたことが後押しとなり、

幸福な食卓 (講談社文庫)

幸福な食卓 (講談社文庫)

 

 

 

  私が同じ懇親会で推した

人生を狂わす名著50(ライツ社)

人生を狂わす名著50(ライツ社)

 

 で勧められていた

人間の建設 (新潮文庫)

人間の建設 (新潮文庫)

 

 

  実に間抜けなことに

 中古で買ったこの本をまた新品で買ってしまったのでした。めでたしめでたし。

東京都教員採用試験問題のご紹介

https://twitter.com/TigerSophia61/status/1150306320941064193

 結果が怖いが面白い試験だったので私の語れる範囲で概要をお知らせする。

 

教職教養

 教職教養のテキストを覚えていれば出来るという簡単に答えられる問題が少なかったように感じる。勉強量に比べて教職教養はかなり定着していたように思っていたが正直自信はない。

 また、高等学校に関する選択問題で「総合的な探究の時間で育成することを目指す資質・能力」が出題された。行きの電車で探究と概念についてぼんやりと考えていたため「きた!」と思ったが、現行と次期の指導要領文言についてあやふやだった部分があり、まさかのここで落とすという…。(文言としては間違えたが育成することを目指す資質・能力としては間違えたと思っていない!という負け犬の遠吠え)

 

専門教養(国語)

 

 評論は以下の本から。

心という難問 空間・身体・意味

心という難問 空間・身体・意味

 

 https://twitter.com/TigerSophia61/status/1150306836559482880

 しつこくしつこくお勧めしたい。

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  小説は恐らく以下の本から。「馬上の友」という短編。

運命 (1956年) (角川文庫)

運命 (1956年) (角川文庫)

 

 https://twitter.com/TigerSophia61/status/1150306569231278080

 

 古文は『曽我物語』、伊勢物語第83段を下敷きにした話から。

新編 日本古典文学全集53・曾我物語

新編 日本古典文学全集53・曾我物語

 

 

 漢文は『伝習録』から。いかにも漢文っぽい話だったが、正直これが一番難しかった。漢文を浴びねば。

新釈漢文大系〈13〉伝習録

新釈漢文大系〈13〉伝習録

 

 

論文問題

 A(主に学習指導に関するテーマ)、B(主に生活指導に関するテーマ)のうちどちらかを選び70分で1000字程度の論文を書くという形式。

 今年度のAのテーマが「各教科等の指導において、『各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせて、自ら問いを見いだし探究する力を育成する。』という重点事項に対し、どのように学習指導に取り組んでいくかという課題であった。

 個人的には書きやすいテーマだったが、抽象に走りやすい私の文章の性格と論文問題のセオリーについて全く把握していないことの二点が懸念事項ではある。

 

 問題及び解答が公開されたので腕試しに解いてみることをお勧めする。

 小説の問題でド派手にやらかし、教職教養でも爆死したため論文は読んでもらえずに落とされる可能性大。

→そんな感じだったのに一次受かって、二次も通り名簿登載されました。結局就職先に私立を選び、都立には就職しなかった。人が足りていないのかもしれない。

【告知】第2回『国語の授業の作り方 はじめての授業マニュアル』読書会

 3月に開催することが出来た第1回読書会。

国語の授業の作り方: はじめての授業マニュアル

国語の授業の作り方: はじめての授業マニュアル

 

 

bungaku-report.com

 第2回が開催出来ることになりました!令和に合わせるように2刷となったこの本を携えて、本の言葉をきっかけに語り合うことが出来たらと。前回が東京だったので、今回は関西で開催することに。

 

どうする? どうなる? これからの「国語」教育: 大学入学共通テストと新学習指導要領をめぐる12の提言

どうする? どうなる? これからの「国語」教育: 大学入学共通テストと新学習指導要領をめぐる12の提言

 

  今月末に刊行されるこの本の古田先生の文章についてもお話し出来たらと思っています(執筆陣の方々参加してくれないかなー)

→まだ手に入れていません…8月頭の遠征、懇親会三昧が痛手。金欠を恨む…。著者割、ご恵投…。笑

 

日時:8月13日(火)(前回と同様ならば14時半から17時)

場所:京都市内某所(参加費として場所をお借りする分のお金は頂く可能性があります…)

 今回も著者である古田尚行先生をお招きすることが出来ました!前回は徒然草を教材にプチ模擬授業をやって下さり、懇親会までお付き合い頂きました。

 せっかくですので出来ればここで懇親会が出来たらと画策中。参加希望者が集まれば予約します。

 一応7月末まで参加者募集を締めますが、前回同様前日の参加希望連絡も大歓迎。ただし会の運営上15名程度で申し込みを締め切ります。

参加を希望される方は、お手数ですが、hamaten61@gmail.comまでご連絡を。

以下、テンプレート。

 

【氏名】

【ご所属】

【読書会でどのようなことを話したいか】

【懇親会】参加を希望するor参加を希望しない

 

 そして参考までに前回の記録を。

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 最後になりますが、私のブログの影響力は微々たるものですのでこのブログを見てくださるお心の広い方々に是非この記事を拡散して頂きたいです。

※お気に入りはブックマークのようなものでリツイートと比べて拡散能力はかなり低いです。リツイートされずお気に入りだけされる虚しさよ。

 参加出来ないという方もご友人等に勧めるつもりで是非拡散にご協力を。関西にいる、ないし関西開催をものともせず全国から足を運んでくださる(今回徳島から院国研メンバーが駆けつけてくれます!)ような熱い国語教育者(及びそのたまご)達のもとにこの告知が届きますように。

 

現在の参加希望者

 古田先生・前回も参加して下さった出版関係の方・京都公立中高教員・滋賀県公立高校教員・たかきさん・はこせんせー・ちいちゃんさん・院国研メンバー・はこせんせーの後輩・私の大学院の後輩・私。正式な出欠は取ってませんが、読書会運営に多大なるお力添えをして下さっている大学の先生も参加してくださるかも?

今回は前回と比べ女性の参加者が5名と参加者の半分近くなり、前回とはまた違った雰囲気になるのでは?とここも楽しみポイント。あと4名(3名?)です。このまま読書会出来たらいいなー。いいのかなー。

 

こくちーずからも募集してます。

https://www.kokuchpro.com/event/7f7739e0ddaa0c0a7fedb8013e4ab982/

4/23『問い続ける力』出版記念イベント@銀座蔦屋書店

 

問い続ける力 (ちくま新書)

問い続ける力 (ちくま新書)

 

 下は個人的な事情に引きつけ過ぎな書評。

当日のツイート

 おしゃれな空間で著者石川善樹先生と本書の編集をした斎藤哲也先生が参加者の質問をもとに対談する形式で。非常に和やか、かつ有意義な時間だった。この日はやや体調を崩していたがそんなことは気にならないほどであった。

 

参加者の声

 

以降は当日の学びをざっくりと紹介する。

本の出来た経緯

 石川先生「気付いたら出来ていた」。この言葉に対し、孔子ソクラテスみたいだと盛り上がった。石川先生と哲学を学ばれている斎藤先生との対談というのも今回の面白さの要因の一つかもしれない。

  専門ではないが哲学を知りたいと思っている身としては斎藤先生が執筆されたという下の本もぜひ読んでみたい。

 その後最初の3頁は本当に書きたかった・世に問いたかったことだということや本を書くのは大変だということ、本書にもあるような「では派」から「とは」派への転向を目指したきっかけ(濱口秀司さんとの出会い)などを語られた。

 現在は問い続けるだけではだめだと『問い続ける力』から関心が移り、『考え続ける力』『作り続ける力』の書籍化を画策中とのこと。

  話を聞いた当時は『作り続ける力』?やや突飛では?と思ったが、

クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育 (リアリティ・プラス)

クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育 (リアリティ・プラス)

 

  この本の8頁にも「そして、今始まりつつあり、これから本格化していくと思われるのが、「創造社会」と呼んでいる時代である。「創造社会」は、英語で言うと「クリエイティブ・ソサエティ」(Creative Sosiety)で、「創造」「つくる」ということが人々の関心や生活における中心的な関心となる時代である。」とあり、もはやこうした流れは私が気付かなかっただけであっという間にスタンダードな社会になるのかもしれない。探究の猛プッシュや文学国語はこの社会の流れを文部科学省は読んでいる?と思わざるを得ない。

 

探究とは何か

 この出版記念イベントの面白かったところの一つに参加者が各々の興味に引き付けて「○○とは何か」を石川先生や斎藤先生に問い、それに先生方が答える形でトークを進めていたことが挙げられる。私は学校という文脈を絡めて「探究とは何か」というようなことを問うた。

 まず石川先生が学校教育において「問いを立てることを禁じる」からの脱却が必要であると切り出し、高校での講演会で先生を質問攻めにしたというなんとも背筋の凍るエピソードを披露して下さった。

 

探求の共同体 ─考えるための教室─

探求の共同体 ─考えるための教室─

 

  この本の372頁に「講義が魅力的でカリスマ的であればあるほど、聞く者を能動的な探求者ではなく受動的な賞賛者にかえてしまう。」とある。賞賛者を生み出すカリスマ的講義が出来る教員がどれだけいるかは分からないが、生徒を能動的な探求者たらしめるために彼らに問う権利を与えることをためらってはいけないと思う。私が好きになれない教師はこの点が完全に欠落している。

 さて、石川先生からは続いて、「では派」と「とは派」の探究について、高校まではせいぜい「では派」の探究で、大学や社会において「とは派」の探究が出来るようになること、「では派」の探究と「とは派」の探究どちらが得意かは人生レベルの問いであること、東大の国語は「とは」を問う問題(1999年の第2問200字作文とメモが残っている)であることなどを伺えた。

 1999年の第2問200字作文問題、テーマは「青春とは何か」。参考にさせて頂いた下の記事の通りであればこの年を境に作文問題は無くなってしまったそう。

note.mu

東大の現代文27カ年[第9版] (難関校過去問シリーズ)

東大の現代文27カ年[第9版] (難関校過去問シリーズ)

 

 

 私以外にも参加者の方が積極的に石川先生に問いを投げかけ、

・議論をすると論理的になりがち。一人の時に大局観が磨かれる。

 

論理的思考のコアスキル (ちくま新書)

論理的思考のコアスキル (ちくま新書)

 

 ・上の本について石川先生「(自分は本で)論理について考えなくていい。安心。」

・マトリクス思考、二軸の取り方について

・機械はゴール・ドリブン、人間はインプット・ドリブン。

・自然科学A=B(分解)、社会科学A≒B(近似)、人文科学A→B(大元)という考え方(石川先生オリジナル)

・子どもは小さい刺激も大きい刺激も同じように反応し、青春時代は小さい刺激に対してむしろマイナスの反応で大きい刺激により強く反応し、大人は刺激に応じた反応をする。(脳科学の知見?)

・プロゲーマー梅原大悟「変化しない自分に飽きている。変化し続ける限り飽きない。」(斎藤先生の「飽きるとは」という問いについて)

どん底を経験すると何事にも①変化を見出せる②視座や志が高い。

 

などのことについて学んだ。次回作『考え続ける力』にて今回出た話をより深めるような対談が収録されていることを期待したい。

 

今回もサインもらいました。(ミーハー)

オスカー・ワイルド『サロメ』読書会@小学館

こんな企画があった。

  ミーハーな私はこの機会にと読者会に申し込み、『サロメ』を購入、読了した。

 

サロメ (岩波文庫)

サロメ (岩波文庫)

 

  全く存じ上げなかったのだが、最近『サロメ』ブームが来つつあるらしい。オスカー・ワイルドの作品は『幸福な王子』以外読んだことがなかったのでしみじみとくる良い話なのかなと思って読み始めて仰天。登場人物のほとんどが各々言いたいことを言っていて会話が成り立っていない、グロテスクな描写があると想像を裏切られっぱなしの戯曲で、読了後頭に?が浮かんだまま美しい描写に無理やり価値を見いだしたのであった。

サロメ』感想

 

読書会での収穫

 先のツイートにもあるように新たな読みを獲得した。

・エロドに共感する。サロメに思いを寄せるシーンは気持ち悪いおっさんそのものだがそこがかえって人間っぽい。(同じグループの大学生の方による「推しキャラは?」の答え)→この発想はなかった。他の登場人物が人間らしくないために気味悪く感じるという考えがあることを知った。ちなみに私の推しキャラはサロメで、理由は情熱的な美女に言い寄られたいからであることは恥ずかしいため言わなかった。

・登場人物が一方通行に相手を想っており、想っている方が想われている方の想っている方を見るなと束縛する。(ベルさんの解説より)

→例えば、20頁には、

 

若きシリア人 待て、王女が立つ!それ、テイブルを離れた!(中略)

ロディアスの侍童 見てはならぬ。後生だ、見るなといふのに。

 

というやり取りがある。エロディアスの侍童→若きシリア人→サロメという関係である。エロディアスの侍童と若きシリア人は共に男性であり、ここに同性愛が感じられるという解釈があるようだ。(※エロディアスの侍童はこのシーン以前も若きシリア人に対し王女サロメを見るなと言っている。)ほかにも若きシリア人→サロメ→ヨカナーン、エロディアス→エロド→サロメの関係においても同様の傾向が確かに見て取れる。興味深いのはサロメだけが見るなではなく見ろと強要するところである。視線に着目するとまた違った『サロメ』が見えてくる。

 

 他にも「サロメはなぜヨカナーンの首を欲しがったと思う?」や「エロドが特に「死者をよみがえらせる奇跡」を嫌った理由は?」(どちらもベルさんの配布資料より)について考えた際には初読で得られなかった読みの解釈が出来た。是非『サロメ』を読んで考えて頂きたい。

 

読みたい本も増えた。

サロメ

サロメ

 

 

→同じグループでお話しした方が勧めていた。

 

サロメ (光文社古典新訳文庫)

サロメ (光文社古典新訳文庫)

 

 

→劇の上演?のために依頼されて訳されたものだそう。福田恆存訳よりも聖書との対応が分かりやすく、注や解説が丁寧なのだそう。(本編より長いというのが名作古典あるあるでツボった)

 

 読書会はやはり良いものである。

 

 読書会と言えば

国語の授業の作り方: はじめての授業マニュアル

国語の授業の作り方: はじめての授業マニュアル

 

 の第二回読書会開催(@京都市内?)に向け細々と準備を進めている。今のところ8/13か14のどちらかで開催を目論んでいる。

読書会では古田先生の本を中心にしつつも、こちらの本についても話が出来たらと思っている次第。執筆者の方来てくださらないかなー…。笑

オノマトペで単元作り初挑戦の振り返り

 三省堂『現代の国語1』に「食感のオノマトペ」という教材がある。教材の内容は面白いのだが、単に読解する対象として扱うのは些か勿体ないような気がした。

  そこでかなり思い切ってオノマトペを中学1年生なりに探究するような単元を作ることにした。以下、単元の概要と成果、課題を示す。なお、紹介する本は大学の国語学の先生のお知恵を拝借した。

 

第1時 オノマトペに興味を持たせる

 

 まずは「オノマトペ」を辞書で調べさせ、語の定義を確認した。擬声語のみとする辞書(古め?)と擬声語・擬態語の総称とする辞書があったのは面白かった。今回は総称とする説を採用した。

オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで (岩波科学ライブラリー)

オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで (岩波科学ライブラリー)

 

  こちらの本の序を音読した。ただ聞かせるだけだと味気なく、また生徒の聞く力がどれほどなのか気になっていたのでメモを取りながら聞くよう指示した。ノートチェックの結果予想通りメモの量はまちまちであり、B5ノート1ページ分から1,2行までかなりの開きがあったことが分かった。ピカチュウを取り上げてオノマトペがなかったら「雷ネズミ」「ネズミ―」という名前だったかもしれないというくだりはかなりウケがよかった。

 その後昨日一日のオノマトペを5個程度ノートに書かせ、全体共有して終了。

 

第2・3時 「食感のオノマトペ」の本文の分析

 似たような意味を持つ2つのオノマトペを比較する問いを立て、その問いを検証するべくクラスにアンケートを行い、その結果を基に分析するといった単元の見通しを伝えた。

  なお、二つのオノマトペを比較するという発想はこの本から得ている。

くらべてわかる オノマトペ

くらべてわかる オノマトペ

 

  その後「食感のオノマトペ」を音読し、アンケート結果からオノマトペに世代間の差があることを指摘している箇所を事実・筆者の考えに分けさせる活動を行った。

 事実と意見の読み分けは「読むこと」の指導事項であり、かつ今後の学習活動でアンケートから得られる事実とそこから得られる考えとをしっかりと区別してほしいと考えたためである。 

 アンケート結果=事実、「考えられる」=筆者の考えはほとんどの生徒が理解していた乃至全体共有で理解できたようだが、それ以外事実のようで筆者の判断が含まれている、事実と考え正確に分けられない箇所の辺りから混乱する生徒が出てきたのは私の教材研究不足であった。

 

第3時 探究する問いの決定

 まずは個人で考えたい問いを考えさせ、その後グループに持ち寄りグループで探究したい問いを決めさせた。その際に先に示した『くらべてわかるオノマトペ』の「「パリパリ」と「サクサク」どっちの方が歯ごたえが軽い?」を紹介し、このような問いを立てると分析しがいがあること、小野先生の論じ方をする必要はなくあくまで中学生である自分たちが同級生にアンケートを取り、それを分析することに価値があることを伝えた。

 自分で作った問いに思い入れがありなかなか譲れないグループ、逆に思い入れがなくなかなか決まらないグループが出てきて、そうしたグループに助け舟を出す手札の少なさは課題だった。

 ちなみに以下のような問いが生徒から出てきた。

・ヒラヒラとパタパタどちらの方が蝶の飛ぶ様子を表しているか。

・テクテクとスタスタどちらの方がスムーズに歩いているか。

・キラキラとピカピカどちらの方が輝いているか。

・パラパラとポツポツどちらの方が雨の表現としてふさわしいか。

・ザバーンとザブーンどちらの方が波が大きいと感じるか。

・ハラハラとドキドキどちらの方が緊張しているか。

・ツルツルとスベスベどちらの方が滑らかか。

 

第4時 アンケート項目の作成

 アンケート項目が分析の鍵を握ることを伝え、選択式・自由記述式のメリット・デメリットを教科書で確認してから、各グル-プで決めた問いを考えるのにふさわしいアンケート項目を作成させた。3問以内という縛りは設けたがそれ以外はフリーでやらせてみた。

 時間ギリギリに提出されたアンケートにオール選択式や問いの言わんとする内容が伝わりにくいものが少なからずあったのはまずかった。この時間はグループの様子を観察し停滞しているなら介入というスタンスだったがもう少し丁寧にやった方がよかったか。とはいえアンケートづくり自体が初めてという生徒も多かったようなのでとりあえずやらせてみるの精神で。

 

 第5時 アンケート回答・分析

 生徒が他のグループのアンケートに答えることに予想以上に時間がかかった。10分もあれば答えられるだろうと踏んでいたので大いに焦ったが、アンケートを通じてオノマトペと向き合い使い分けを必死に考えていたのだろうと肯定的に解釈した。少なからず「口じゃなくて手を動かせ!」と言いたくなる生徒はいた。生徒の頃はこういうタイプだったが、教師の側に立つとこんなにハラハラするものなのか…と今までお世話になった先生方に謝りたい気持ちに。

 アンケートの分析ではそれほど考えずに使用した「理由づけ」という言葉に質問が殺到した。アンケート結果という事実とグループの考えを結び説得力を持たせるものと全体に向けて説明したが、抽象的で実際の分析の過程でどれが「理由づけ」に該当するかいまいち掴み切れなかったものと考えられる。介入して話し合いに即した形で理由付けを各グループで示したものの全体での指示の際にもう少しうまい説明が必要だったと反省する限り。

 

第6時 最終調整と発表

 ワークシートを埋めると自然に発表に必要な項目がそろうというような作りにしたのはよかった。また、発表の手引き(と名乗っていいものか)という台本型手引きもどきを配布していたため生徒はあまり発表でドタバタせず、なかなかイケてるなぁと感心する発表が多かった。(スピーチとしてではなく、分析の報告として)

 

 オノマトペを題材に比較する・アンケート項目を作る・分析するというような学びを組織し、経験させられたのは大きい。研究会で単にオノマトペについて生徒自身の経験のみで考えさせるだけでは学びの深まりに欠ける可能性があると教えて頂いていたのが奏功した。オノマトペ以外にも似た表現について考える癖が付いてくれたらこれに勝る喜びはないだろう。BCCWJを活用して用例を手渡すのもありだったのでは?というアドバイスも頂けたため今後同じような単元をする際に取り入れたい。

 終始問題だったのはグループの人数であった。今回は時間数を考慮して各グループ5・6人の6グループで行ったが、分析をしたがる生徒と手持ち無沙汰になる生徒とのバランスやグループとしてのまとまりにはかなりを気を配らなくてはならなかった。やはりよほどグループでの学びに熟達していない限り5人以上で1つのことをやるのは難しいと気付かされた。ベストは4人だと思っているが、9グループつくって活動させるのはなかなか難しい。グループ分けに必然性がないのも機能させるのが難しい要因であろう。

 勤務校の都合上今後も彼らはグループで学ぶという機会が多くあることが予想される。どのような手立てや学習活動がグループでの学びを機能させるのかについて今後も考える必要がある。

ディズニー実写映画のすゝめ

この日は研究会があり、『美女と野獣』の時のようにリアルタイムでは見られない…。ただそれだけの価値がある会である。

 

 うるさい実況

→ベルと野獣がベルの父母が過ごしたパリの家を訪ねるシーン

hama1046.hatenablog.com

 そして以下の二点をメルカリにて衝動買い。現在行われているポイントバックチケットキャンペーンが私の購買意欲に火をつけた。

 メルカリ始めたいという方は招待コード【NMQBHZ】を入れることをお忘れなく。(しつこい)

 

 

美女と野獣 ― スペシャル・リミテッド・エディション [DVD]

美女と野獣 ― スペシャル・リミテッド・エディション [DVD]

 

  個人的に大好きな作品であり、教材として使いたいという私欲もあり。誕生日プレゼントということでそんな自分を大目に見ている。

 教材として使うとすれば、上記の二つの映画及び原作を比較・分析して、それらの違いにどのような効果があるのかについて探究させたい。日常的な楽しみではあるがこうした比較・分析の経験が映画や本といったメディアを豊かに楽しむ道を切り開くのではないかと考えている。まずは時間のある時に自分でやってみようと思う。そこでの分析を学科の紀要に寄稿しても面白そう。修了しないと出来ないけど。

 

  映像と原作の比較についての実践の蓄積はIBに豊富にありそうである。実際に上の本の実践編にそうした内容のものが扱われていた。IBの授業づくりを「よそのもの」とせずに良いところはガンガン授業づくりに取り入れていくことも大事だ。

参考

 

hama1046.hatenablog.com

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 原作ながらディズニーとはかなり異なる印象を受ける

美女と野獣 (新潮文庫)

美女と野獣 (新潮文庫)

 

 や

 

「美女と野獣」の野獣になる方法 (文春文庫 み 35-2)

「美女と野獣」の野獣になる方法 (文春文庫 み 35-2)

 

 という永久の積読本はあるものの

美女と野獣[オリジナル版]

美女と野獣[オリジナル版]

 

 二年前くらいに購入したこの本が行方不明なことが最近の悲しいこと。

 

 さて、先週土曜に公開されたばかりの『アラジン』を鑑賞した。アニメ版は言うまでもなく最高だが、実写も素晴らしかった。

美女と野獣』よろしく『アラジン』の実写はアニメ版に無い設定を付け加えている。こちらに関しては実写版を推したい。これも比較・分析したら面白いだろうなぁと財布の紐が緩みそうな予感がする。今度は字幕でまた観たいなぁ。