虎哲の探究

一介の公立中高国語科教員の戯言。未熟者による日々研鑽の記録。

オタク文章術の秘訣:推しを語りたいなら「やばい!」だけじゃない

3年ぶり2回目、とか甲子園出場校みたいな紹介をしてみる。

 

3年前

hama1046.hatenablog.com

hama1046.hatenablog.com

今回は『プロポーズ大作戦』で推し語り600文字に挑戦し、「推しやば」刊行記念イベントにて三宅さんに添削してもらった。

 

Before

 28年の人生を振り返ってみると、自分の選択や行動に対しての後悔はほとんどない。今のところそこそこ幸せな人生である。一方で選択しなかった道や行動しなかったことへの未練は数えきれない。一見矛盾とも思える奇妙な事実は、少なくとも私の中においては両立している。

 そんな私が惹かれてやまないのが『プロポーズ大作戦』というドラマだ。

 主人公の健(けん)が幼いころから一緒に過ごしてきた礼(れい)の結婚式で「あの頃に戻ってもう一度やり直したい」と強く願ったことで、教会に住む妖精から何度か二人にとって重要な場面をやり直す機会を得るという、いわゆるタイムリープものである。

 この設定自体はよくあるものだと思われそうだが、この『プロポーズ大作戦』が数多く観てきたドラマの中でいまだ私にとってのナンバーワンの地位を占めている。好きな理由は無数に挙げられるが、その最大の理由は登場人物の「意気地なしに徹する勇気」や臆病な優しさにある。

 主人公の健は礼の婚約者多田(ただ)さんと礼とが距離を縮める機会をタイムリープ以前同様ことごとくアシストしてしまう。

 礼は健に対して何度も自分の思いを告げようとするも、これまでの関係が壊れるのを恐れて踏みとどまる。

 ドラマ終盤、多田さんは礼の中に健への思いを見いだし、式場から飛び出すきっかけを与えてしまう。

 登場人物がことごとく意気地なしで臆病だが、相手を思う勇気と優しさで行動する。その様が何度も自分に響くのだ。(600文字)

 

After

 28年の人生を振り返ってみると、自分の選択や行動に対しての後悔はほとんどない。今のところそこそこ幸せな人生である。一方で選択しなかった道や行動しなかったことへの未練は数えきれない。一見矛盾とも思える奇妙な事実は、少なくとも私の中においては両立している。

 そんな私が惹かれてやまないのが『プロポーズ大作戦』というドラマだ。

 主人公の健(けん)が幼いころから一緒に過ごしてきた礼(れい)の結婚式で「あの頃に戻ってもう一度やり直したい」と強く願ったことで、教会に住む妖精から何度か二人にとって重要な場面をやり直す機会を得るという、いわゆるタイムリープものである。

 この設定自体はよくあるものだと思われそうだが、この『プロポーズ大作戦』が数多く観てきたドラマの中でいまだ私にとってのナンバーワンの地位を占めている。好きな理由は無数に挙げられるが、その最大の理由は登場人物の「意気地なしに徹する勇気」や臆病な優しさにある。人生への未練の多き私にとって、意気地なしだが優しい彼らの行動はいつも胸に響く。

 主人公の健は礼の婚約者多田(ただ)さんと礼とが距離を縮める機会をタイムリープ以前同様ことごとくアシストしてしまう。

 礼は健に対して何度も自分の思いを告げようとするも、これまでの関係が壊れるのを恐れて踏みとどまる。

 ドラマ終盤、多田さんは礼の中に健への思いを見いだし、式場から飛び出すきっかけを与えてしまう。

 登場人物がことごとく意気地なしで臆病だが、相手を思う勇気と優しさで行動する。その様が何度も自分に響くのだ。(591文字)

 

 今回のイベントのトリに添削を提示して下さったのが嬉しかった。添削箇所こそ少ないが、なぜこのドラマを自分が好きなのかつなげる部分がないという根本的なところを指摘されたので、精進したい。

 「なぜ」をとことん言語化していくことが、推し語り文章にとって重要であることは三宅さんが「推しやば」において主張してきたことだ。

自分の気になった推しの細部に対し、次々問いを重ねて妄想を膨らまし、読者との距離を考えて書く。これが私がこの本から受け取った秘訣だ。自分のつくった言葉で推しを語りたい。(『推しの素晴らしさについて語りたいのに「やばい!」しかでてこない―自分の言葉でつくるオタク文章術』に対する読書メーターに寄せた拙書評)