虎哲の探究

単なる私立校国語科教員の戯言。未熟者による日々研鑽の記録。

オノマトペで単元作り初挑戦の振り返り

 三省堂『現代の国語1』に「食感のオノマトペ」という教材がある。教材の内容は面白いのだが、単に読解する対象として扱うのは些か勿体ないような気がした。

  そこでかなり思い切ってオノマトペを中学1年生なりに探究するような単元を作ることにした。以下、単元の概要と成果、課題を示す。なお、紹介する本は大学の国語学の先生のお知恵を拝借した。

 

第1時 オノマトペに興味を持たせる

 

 まずは「オノマトペ」を辞書で調べさせ、語の定義を確認した。擬声語のみとする辞書(古め?)と擬声語・擬態語の総称とする辞書があったのは面白かった。今回は総称とする説を採用した。

オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで (岩波科学ライブラリー)

オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで (岩波科学ライブラリー)

 

  こちらの本の序を音読した。ただ聞かせるだけだと味気なく、また生徒の聞く力がどれほどなのか気になっていたのでメモを取りながら聞くよう指示した。ノートチェックの結果予想通りメモの量はまちまちであり、B5ノート1ページ分から1,2行までかなりの開きがあったことが分かった。ピカチュウを取り上げてオノマトペがなかったら「雷ネズミ」「ネズミ―」という名前だったかもしれないというくだりはかなりウケがよかった。

 その後昨日一日のオノマトペを5個程度ノートに書かせ、全体共有して終了。

 

第2・3時 「食感のオノマトペ」の本文の分析

 似たような意味を持つ2つのオノマトペを比較する問いを立て、その問いを検証するべくクラスにアンケートを行い、その結果を基に分析するといった単元の見通しを伝えた。

  なお、二つのオノマトペを比較するという発想はこの本から得ている。

くらべてわかる オノマトペ

くらべてわかる オノマトペ

 

  その後「食感のオノマトペ」を音読し、アンケート結果からオノマトペに世代間の差があることを指摘している箇所を事実・筆者の考えに分けさせる活動を行った。

 事実と意見の読み分けは「読むこと」の指導事項であり、かつ今後の学習活動でアンケートから得られる事実とそこから得られる考えとをしっかりと区別してほしいと考えたためである。 

 アンケート結果=事実、「考えられる」=筆者の考えはほとんどの生徒が理解していた乃至全体共有で理解できたようだが、それ以外事実のようで筆者の判断が含まれている、事実と考え正確に分けられない箇所の辺りから混乱する生徒が出てきたのは私の教材研究不足であった。

 

第3時 探究する問いの決定

 まずは個人で考えたい問いを考えさせ、その後グループに持ち寄りグループで探究したい問いを決めさせた。その際に先に示した『くらべてわかるオノマトペ』の「「パリパリ」と「サクサク」どっちの方が歯ごたえが軽い?」を紹介し、このような問いを立てると分析しがいがあること、小野先生の論じ方をする必要はなくあくまで中学生である自分たちが同級生にアンケートを取り、それを分析することに価値があることを伝えた。

 自分で作った問いに思い入れがありなかなか譲れないグループ、逆に思い入れがなくなかなか決まらないグループが出てきて、そうしたグループに助け舟を出す手札の少なさは課題だった。

 ちなみに以下のような問いが生徒から出てきた。

・ヒラヒラとパタパタどちらの方が蝶の飛ぶ様子を表しているか。

・テクテクとスタスタどちらの方がスムーズに歩いているか。

・キラキラとピカピカどちらの方が輝いているか。

・パラパラとポツポツどちらの方が雨の表現としてふさわしいか。

・ザバーンとザブーンどちらの方が波が大きいと感じるか。

・ハラハラとドキドキどちらの方が緊張しているか。

・ツルツルとスベスベどちらの方が滑らかか。

 

第4時 アンケート項目の作成

 アンケート項目が分析の鍵を握ることを伝え、選択式・自由記述式のメリット・デメリットを教科書で確認してから、各グル-プで決めた問いを考えるのにふさわしいアンケート項目を作成させた。3問以内という縛りは設けたがそれ以外はフリーでやらせてみた。

 時間ギリギリに提出されたアンケートにオール選択式や問いの言わんとする内容が伝わりにくいものが少なからずあったのはまずかった。この時間はグループの様子を観察し停滞しているなら介入というスタンスだったがもう少し丁寧にやった方がよかったか。とはいえアンケートづくり自体が初めてという生徒も多かったようなのでとりあえずやらせてみるの精神で。

 

 第5時 アンケート回答・分析

 生徒が他のグループのアンケートに答えることに予想以上に時間がかかった。10分もあれば答えられるだろうと踏んでいたので大いに焦ったが、アンケートを通じてオノマトペと向き合い使い分けを必死に考えていたのだろうと肯定的に解釈した。少なからず「口じゃなくて手を動かせ!」と言いたくなる生徒はいた。生徒の頃はこういうタイプだったが、教師の側に立つとこんなにハラハラするものなのか…と今までお世話になった先生方に謝りたい気持ちに。

 アンケートの分析ではそれほど考えずに使用した「理由づけ」という言葉に質問が殺到した。アンケート結果という事実とグループの考えを結び説得力を持たせるものと全体に向けて説明したが、抽象的で実際の分析の過程でどれが「理由づけ」に該当するかいまいち掴み切れなかったものと考えられる。介入して話し合いに即した形で理由付けを各グループで示したものの全体での指示の際にもう少しうまい説明が必要だったと反省する限り。

 

第6時 最終調整と発表

 ワークシートを埋めると自然に発表に必要な項目がそろうというような作りにしたのはよかった。また、発表の手引き(と名乗っていいものか)という台本型手引きもどきを配布していたため生徒はあまり発表でドタバタせず、なかなかイケてるなぁと感心する発表が多かった。(スピーチとしてではなく、分析の報告として)

 

 オノマトペを題材に比較する・アンケート項目を作る・分析するというような学びを組織し、経験させられたのは大きい。研究会で単にオノマトペについて生徒自身の経験のみで考えさせるだけでは学びの深まりに欠ける可能性があると教えて頂いていたのが奏功した。オノマトペ以外にも似た表現について考える癖が付いてくれたらこれに勝る喜びはないだろう。BCCWJを活用して用例を手渡すのもありだったのでは?というアドバイスも頂けたため今後同じような単元をする際に取り入れたい。

 終始問題だったのはグループの人数であった。今回は時間数を考慮して各グループ5・6人の6グループで行ったが、分析をしたがる生徒と手持ち無沙汰になる生徒とのバランスやグループとしてのまとまりにはかなりを気を配らなくてはならなかった。やはりよほどグループでの学びに熟達していない限り5人以上で1つのことをやるのは難しいと気付かされた。ベストは4人だと思っているが、9グループつくって活動させるのはなかなか難しい。グループ分けに必然性がないのも機能させるのが難しい要因であろう。

 勤務校の都合上今後も彼らはグループで学ぶという機会が多くあることが予想される。どのような手立てや学習活動がグループでの学びを機能させるのかについて今後も考える必要がある。