虎哲の探究

一介の公立中高国語科教員の戯言。未熟者による日々研鑽の記録。

【イベント報告】三宅香帆さんの「超文章塾」

 こちらのイベントでの拙文添削結果をご報告!

hama1046.hatenablog.com

 川崎さんのポジションうらやましい…。笑

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Before

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After

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 推敲の学習の時に示そうかなと思いつつ、このレベルの添削は技術というよりも芸術かなぁとも思う。

 ただ140字という制約の中でどういう修飾語をカットしているか、どういう順番で書くかなどは参考になるだろう。実際真ん中の文を頭に持ってくること自体は検討したがそのまま入れ替えると違和感があって断念したという。三宅さんスタイルなら違和感がないと納得。見比べてみると自分の文章の「道徳」臭さが気になる…。

 当然のことながら1回受講しただけでは講師の先生方の文章力には及ばない。よく読みよく書くことでしか文章力は上がらないのだ。ただしどのような観点で添削するかを学ぶことは文章をグッと良くする大きなヒントになるはずだ。

 次回も参加したいのでぜひオンラインでの開催をご検討ください!

【イベント紹介】三宅香帆さんの「超文章塾」

もともと予定されていた回は新型コロナウイルス流行の影響で延期に。仕方ないこととはいえガックリきていたのでオンライン開講有難い!

申し込みしていない方、2020年7月19日までですので急ぎましょう!!

https://sho-cul.com/courses/detail/195

小学館カルチャーライブの参加はこれで3回目。文学youtuberベルさんを招いた『サロメ』読書会、新版の訳者池田香代子さんを招いた『夜と霧』読書会も充実していたため今回も期待大。

以下が好評だったという前回のイベントレポート

https://note.com/sho_cul/n/n307866080cf0

申し込んだもののお金振り込み忘れたり、イベント当日に細々した作業が多くて疲れ切っていたりと色々あって行けなかったのが悔やまれる内容…。

 

 

<事前課題>
あなたの好きな映画について140字レビュー。

とのことで大好きな映画『美女と野獣』で挑戦。

課題の締切を見誤り、折角の機会が…とガックリきていた(2回目)が、講師を務める三宅さんや編集者・作家の川崎さん、小学館の方々のご厚意で今日までにメールで提出すれば添削を受けられるとのご連絡があり、大慌てで書き上げた。

美女と野獣 (字幕版)

美女と野獣 (字幕版)

  • 発売日: 2015/03/18
  • メディア: Prime Video
 

 

心から人を愛し、その人から愛されなければ永遠にとけない呪いにかけられた野獣。村一番の美女でありながら変わり者として見られているベル。二人で過ごす日々はお互いを少しずつ変えていく。本当に愛しているなら相手を尊重し、繋いだ手を離さなければならない時がある。呪いのかかった野獣たち必見。

 

普段から140字ギチギチツイートを心掛けているだけあってなかなかうまくいったのでは?と自画自賛。ベルの形容「聡明な」を泣く泣く削ったり、本作の魅力である音楽や二人以外の登場人物、ストーリーを完全にスルーしたりしてやっと字数に収まった。

野獣の変化だけでなくベルの変化についても言及したこと、「本当に愛しているなら相手を尊重し、繋いだ手を離さなければならない時がある。」と本作における私の大好きなシーンを要約したことがレビューのポイントである。この文章をどう料理してくれるのか当日のイベントが楽しみである。

時空間を縦横無尽に駆け巡る好著『NHK出版 学びのきほん 本の世界をめぐる冒険』

こんな本が読みたかった!

 「むかしむかし、「本」は人間でした。」(10頁)

→「インターネット上で情報発信する個人でさえも「本」になるのが現代なのです。」(95頁)のように、本を巡る歴史、回帰を鮮やかに描き出す。

万葉集』では、「言葉(ことば)」を「言羽」とも書いていました。しかし、「ことば」に羽が生えて飛んでいってしまうと困るので、次第に「言葉」と書くようになったのです。(14頁)

など眉唾物の情報もあるが、それを差し引いても頭にある知識が現実と繋がる快感がある。

 

 54-55頁にあるレオナルド・ダ・ヴィンチの蔵書について書かれたものも興味深かった。以下の本も読んでみたい。

 個人的良著の必要条件であるブックガイドもしっかりと載っている。(99-100頁、「本」の全てを知るためのブックガイド)

 本書で紹介されたマーシャル・マクルーハンの「メディアはメッサージから、マッサージへ」という言葉や本書の「世界はスマートフォンの中で、すでに図書館化しているとも言えるでしょう。」(95頁)は今後使っていきたい。

初等・中等教育にも十分活かせる!成瀬尚志編著『学生を思考にいざなうレポート課題』

 今回扱う『学生を思考にいざなうレポート課題』は成瀬尚志先生を中心とした科研費研究メンバー、その科研費研究の成果を報告した公開研究会のゲストの寄稿からなる「レポート課題を軸に考える授業設計マニュアル」である。

学生を思考にいざなうレポート課題

学生を思考にいざなうレポート課題

  • 発売日: 2016/12/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  

 書き出しておいてなんだが、お世話になっている二人の先生の先生のブログをお読みになればよいと思う。私のブログは私が本当に気になったところだけをさらう形で。

askoma.info

 

monkokugo.blog.fc2.com

  去年の全国大学国語教育学会茨城大会で買っていたが、適宜参照することはあっても通読はできていなかった。そんな折クロゾフ先生が通読、推奨されていたこともあり、時間を作って一気に読んだ。

 なお、成瀬先生ご本人が本書のエッセンスをギュッと凝縮した動画をアップなさっている。未読の方はそちらを参照の上ご購入を検討されたい。


コピペを防ぐためのレポート課題の出し方の工夫

 本書を貫く「良い論題を出せば、良いレポートが生まれる」という「暗黙の前提」は私の少ない経験からも同意できるものだ。

 そのうえで論題をどうするか、授業をどう設計するかが重要になってくる。

 72頁に示されたR(レポート論題)タキソノミー、「自分の中のものさしを成長させる」(94‐96頁)授業設計を今後も念頭に置きたい。

  また「第5章学生が自分で問いを立てるための授業デザイン」で扱われた実践の方法について述べられたこちらの本も読みたい。

大学生のための「読む・書く・プレゼン・ディベート」の方法 改訂第二版
 

  「初等・中等教育にも十分活かせる!」とタイトルに書いた。本書は高等教育に携わる方向けに書かれたものであるが、初等・中等教育に携わる国語科教員である私にとってもこの本は大いに参考になった。他教科においてもレポートを課すことは多い。

 ただ「大いに参考になった」といっても説得力がない。いずれ1学期中3に対して実践した単元「コロナ禍と社会について考える」及び単元まとめとして書かせた文章を本書の内容に照らして振り返り、今後の実践について考えたい。

吉野弘「冷蔵庫に」の紹介

  昨日で授業は一区切り。慣れないオンライン授業で苦労もあるだろうと思い、ひたすら楽しくやっていこうというコンセプトのもと小6の授業は「詩を読む・紹介する・書く」という単元で今学期を締めた。

 ある児童は吉野弘「樹」を紹介していた。育ちが良い。

 そんなわけで積読だったこの本を引っ張り出し、パラパラめくってお気に入りの詩を見つけた。

吉野弘詩集 (ハルキ文庫)

吉野弘詩集 (ハルキ文庫)

  • 作者:吉野 弘
  • 発売日: 1999/04/01
  • メディア: 文庫
 

冷蔵庫に

 

冷蔵庫

お前、唸っていたな

生きものみたいに

深夜

 

歌っていたのかもしれないが

それにしては陰気な歌だった

冷蔵庫

生きものの真似をしていたのか、お前

 

冷蔵庫

間違っても

生きものの感情なんて身につけてはいけないよ

機械以外のものになってはいけない

 

冷蔵庫

設計された働き以上のことをしてはいけない

休み休み、働いていればいい

如何にあるべきかなんて苦悶するんじゃないよ

 

ロボットに感情を持たせようなどと

人間が考え始めるご時世だが

そんな馬鹿な夢想の相手をしてはいけない

生きものになれば確実につらいことがふえる

 

人間は何十万年もドタバタ見苦しく生きてきたのに

まだ自分に愛想を尽かすことも知らない

そういう狂った生きものなんだから

人間を見習ってはいけない

 

ただ、設計されただけの働きを

休み休み、果たしていればいい

知らずに与えられた機械の幸福というものを

お前は破らぬほうがいい

 

わかったな

 

ネガティブ・ケイパビリティと〈探究〉・文学について

 青国研という研究会に所属している。このような状況で年内の例会は見合わせという悲しいお知らせがあったが、メールでの近況報告など緩やかに繋がることが出来ている。青国研に学ぶ優れた先生方は優れた本を読んでいる。たまに読んでいる本のセンスを褒めて頂くことがあるが、基本的に尊敬する先生の読んでいる本を聞き出し、後追いで読んでいるだけである。そこでこの本をおすすめされた。

 「拙速な理解ではなく、謎を謎として興味を抱いたまま、宙ぶらりんの、どうしようもない状態を耐えぬく力」(77頁)

 表題にある「ネガティブ・ケイパビリティ」は本書において様々に言い換えられているが、個人的に分かりやすいものを上に引用しておく。

 この「ネガティブ・ケイパビリティ」は〈探究〉によって身につく態度(≒力)ではないかと思う。この概念が詩人キーツによって初めて記述されたことからも分かる通り、「ネガティブ・ケイパビリティ」を身に付ける上で詩作のようにじっくり時間をかけて物事に向き合うことが重要である。現在が「宙ぶらりんの、どうしようもない状態」だからこそ、小6には詩の創作、中3にはコロナ禍と社会について考える問いを立てさせ、それを考える文章を書くことを課している。

 教育について語る「第九章 教育とネガティブ・ケイパビリティ」は完全に首肯できないものの、示唆に富むものだ。「答えの出ない問題を探し続ける挑戦こそ教育の神髄」(191-192頁)と述べているが、これはあくまで学びの神髄であり、教育=学びではないというのが簡単に述べられる首肯できない点である。教育は学びに向かうものであるべきだとは思うが、常に学びとイコールかというと疑問である。

 この本で紹介される文学も魅力の一つ。

 キーツの「輝く星」の情熱的な調べはお気に入り。

輝く星よ!もし私があなたのように不動なものであるなら

夜のしじまの中に、孤独に輝きを放っていない

二つの瞼を永遠に開けて、あたかも自然の我慢づよい、眠りを知らない保護者の如く、見つめるのだ

朝は司祭の仕事のように

純なる洗浄を 地球の人々の岸辺に水をやる

あるいはまた 山や原野に積もった雪に新たに柔らかく雪が降って仮面となったのを見つめている

いや、まだ依然として確固たる、決して変わらない

私の可愛い恋人の熟しかけた胸を枕に

その柔らかい呼吸の上下を感じつつ

甘い不安の中で、永遠に目覚めながら

静かに静かに、彼女の優しい息づかいを聞こう

そして永遠に生き、さもなければ気を失って死のう

対訳 キーツ詩集―イギリス詩人選〈10〉 (岩波文庫)

対訳 キーツ詩集―イギリス詩人選〈10〉 (岩波文庫)

  • 作者:キーツ
  • 発売日: 2005/03/16
  • メディア: 文庫
 

 花散里を主人公にした短編「源氏の君の最後の恋」も切なく美しい。

東方綺譚 (白水Uブックス (69))
 

ネガティブ・ケイパビリティ」 概念発見の経緯や著者自身の医学的な面での解説などさまざまな内容が盛り込まれている分色んな人に刺さる読み応えのある本だと思う。

読んだ方は是非感想聞かせてください。

 

 

【哲学対話体験記】なぜ「生活のパートナー」と「セックスのパートナー」は同じ人であるべきだとされているのか?

【なぜ「生活のパートナー」と「セックスのパートナー」は同じ人であるべきだとされているのか?】という問いで、嫉妬は、現状維持を脅かすものに対する人間的な本能なのではないかという話になって、おおすげー、なるほど!ってなった。近しいものに対してするっていう嫉妬観が更新。まさに概念の洗練。

 

本日の哲学対話を通じての感想ツイート。「概念の洗練」という言葉は土屋陽介先生のこちらのご著書から拝借した。

 

 

哲学対話について語り、聞き、考え、問う場であるという言葉があった。まさしくその通り。哲学対話は論破を目的とした議論の場ではなく、多様な価値観を持った者たちが語り、聞き、考え、問う共生の場である。

 

頭の中に残っている発言を並べておくので、是非読者の方にもこの問いについて考えて欲しい。発言は順不同。

 

「生活のパートナー」を自然と結婚相手と読み替えていた。結婚って必要?

「生活」には制度と気持ちの側面がある。

人間は居場所を求める。

有限さはお金についてだけでなく、時間や気持ちについても考えられるものであり、その捉え方は人によって異なる。

聞いていて分からなくなったのでもう少し、もう一度考えを聞きたい。