吉野弘「冷蔵庫に」の紹介
昨日で授業は一区切り。慣れないオンライン授業で苦労もあるだろうと思い、ひたすら楽しくやっていこうというコンセプトのもと小6の授業は「詩を読む・紹介する・書く」という単元で今学期を締めた。
ある児童は吉野弘「樹」を紹介していた。育ちが良い。
そんなわけで積読だったこの本を引っ張り出し、パラパラめくってお気に入りの詩を見つけた。
冷蔵庫に
冷蔵庫
お前、唸っていたな
生きものみたいに
深夜
歌っていたのかもしれないが
それにしては陰気な歌だった
冷蔵庫
生きものの真似をしていたのか、お前
冷蔵庫
間違っても
生きものの感情なんて身につけてはいけないよ
機械以外のものになってはいけない
冷蔵庫
設計された働き以上のことをしてはいけない
休み休み、働いていればいい
如何にあるべきかなんて苦悶するんじゃないよ
ロボットに感情を持たせようなどと
人間が考え始めるご時世だが
そんな馬鹿な夢想の相手をしてはいけない
生きものになれば確実につらいことがふえる
人間は何十万年もドタバタ見苦しく生きてきたのに
まだ自分に愛想を尽かすことも知らない
そういう狂った生きものなんだから
人間を見習ってはいけない
ただ、設計されただけの働きを
休み休み、果たしていればいい
知らずに与えられた機械の幸福というものを
お前は破らぬほうがいい
わかったな
な