全国大学国語教育学会第135回東京ウォーターフロント大会の振り返り(まずは二日目)
順番前後してすみません。怒涛の学会ラッシュで書くことが多すぎるが、時間は作れていないというダメダメっぷり。
大村はま記念国語教育の会平成30年度記念大会の続きも必ず記事にしなければ・・・。
現在は甲斐先生の国語教室を見学させていただいている。大学院の先生方の理解もあり、15日まで大学院の授業を休み、国語教室に張り付きじっくり単元の種まきや進め方、授業者による反省の視点(ここが大事だなと気付かされた)を学ばせてもらう予定だ。このことも記事にすることで自分の学びの記録及び他の学生や先生方に知ってもらう機会となるようにしたい。(許可を取ります。)
中学校 国語授業づくりの基礎・基本 学びに向かう力を育む環境づくり (シリーズ国語授業づくり)
- 作者: 安居 總子,甲斐 利恵子,日本国語教育学会
- 出版社/メーカー: 東洋館出版社
- 発売日: 2018/08/09
- メディア: 単行本
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【中学校 国語授業づくりの基礎・基本 学びに向かう力を育む環境づくり (シリーズ国語授業づくり)/安居 總子他】今月末にⅡ章の著者甲斐利恵子先生の授業を2週間ほど見させて頂く機会を得た為予習がて… → https://t.co/wRbuHS5eYW #bookmeter
— はまてん (@Hamaten61) 2018年10月25日
この本を予習のためと購入し、読了している。しかしなんと先生から「差し上げようと思っていた」という言葉を頂けたので人生初著者から本を頂ける機会となるかも・・・。
PC持参し、発表内容を打ち込んだ二日目の内容を先に示す。一日目の内容もしっかりとまとめていきたい。
課題研究発表「国語科教育を問いなおす② 言葉」
「ポップカルチャーは児童生徒の言語/物語環境をどう変えるのか」東京学芸大学千田洋幸先生
東浩紀・柄谷行人・見田宗介を引用し、現代は大きな物語(単純な近代)が崩壊した小さな物語に依拠する虚構の時代(再帰的近代)であることを示す。もう一つの世界をメディアが保障する時代となった。加えて2000年以降は自らの身体が拠点となる(聖地巡礼・コスプレ・踊ってみた等)。
ポップカルチャーの視覚性が作り出す言語/物語環境の例としてキャラクターを挙げる。ライトノベルはストーリーよりキャラクター重視したもので、イラストと合わせて読むことが必須となる。読者の中でキャラクターが育成されるのがライトノベルの読書にあるプロセスだそうだ。ポップカルチャーの聴覚性が作り出す言語/物語環境の例としてボーカロイドを挙げる。
目や耳や体を生かした読解の可能性、文化リテラシーの拡張を指摘。学校におけるポップカルチャーに対する抑圧をなくそう。映画などは既に教材として組み込まれ始めている。そして、スマホはもはや学習者の脳の一部となっているのだろう。
「君はスマホを忘れてくるなんて学校に何しに来たんだ!」と言う時代が来るか。#jtsj
— はまてん (@Hamaten61) 2018年10月28日
藤田先生は新井紀子の門下生だそうだ。
しかしながら、RSTが本当に教科書を読む力を図っているかなどといった理由からAI研究者と教育者の立場との中立的な立ち位置でAIに何が出来、何が出来ないか、そこから人間にしかできないことを我々に教えてくださった。
ゲームは、「知識表現は一意かつ明確」であり、「状況判断がしやすい」ため得意だが、「大学入試」は複雑な解釈を要求するものもある。(単語で回答するファクトイド型を解くのは可能。だからGMARCHにも受かるのか?)
また俳句を詠むAIを紹介し、文法・季語等の決まりを守りつつも人間の作る句にはない面白さがあることも紹介した。AI研究はボトムアップ式に進んでいったと認識していたが、トップダウン式研究も今後求められる。AIの立場から察する力共感する力の育成を国語科学習に求めていた。作文添削に活用できるものなどAI研究には教育応用部門もあるという。今後AIとの共存を実現するためにこうした研究をキャッチアップしたい。(あわよくばジェネリック利用・共同研究したい)
「文学をマルチモーダルに読み解く学習の可能性」(日本体育大学奥泉香先生)
LINE等口頭表現の特徴を備えた書記テクスト、エヴァンゲリオン風フォントのような色や文字デザインに凝った書記テクスト等のような昨今の学習者を取り巻くテクスト環境の変化を示し、再び画一化から離れる動きがある。
現状、国語科で学ぶ内容を「ずらしたり、組み合わせたりして読んでいる。
カランジスとコープ(ニューロンドン・グループ)が新たな形態や種類のテクストに出逢った時に学習者が既有の知識を総動員してそのテクストから意味を構築するための「手がかりを探す方略の力」を付けられる学習の経験の重要性を指摘したことを紹介し、国語科で必要な学習を提案する。そのヒントとしてクレス(2010)の雑誌や広告、絵本の学習材化、「モード概念」の導入の考え方を示す。さらに「MR」(member resources)概念の導入や「MR」を省察する学習を提案する。今後の課題として
メタ言語概念は新たな暗記を強いるかという浜本純逸氏の質問に対し、発見学習を通して得た発見に概念を与えることはあっても暗記事項を増やすというようにはならないのではと回答。
藤森先生によるまとめ
藤森先生による課題研究まとめ。#jtsj pic.twitter.com/GCzdpCu1LK
— はまてん (@Hamaten61) 2018年10月28日
様々な発表によって「言葉」とは何かを考える機会を得た。文字が視覚的表象を持つということを指摘した樺島忠夫のエッセイ(以前教科書掲載)は参考になる。既存の概念を見直す必要があるのではないか。
以前は我が大学→筑波→研究者という流れがあったんだなとしみじみ。
— はまてん (@Hamaten61) 2018年10月28日
教員養成の色彩が強いところだからそうした人材の存在がいたことは誇らしい。
立ち読みした結果お金もないのについ買ってしまった・・・。まだ通読できていないが、新学習指導要領下の教科『現代の国語』や『国語表現』の参考になるのではと考えている。新学習指導要領と合わせて読みたい。恐るべし、大修館。恐るべし、パワーライティング。
入部明子先生、菊野雅之先生にご挨拶させていただいた。入部先生は中高と親しくしてもらった友人のお母様でもあり、かつ大学の先輩でもある。大修館良いっすよね!菊野先生からはブログを読んでくださっているというお話を聞き感激。両先生の研究に学び、どのような実践が展開できるか考えていきたい。
— はまてん (@Hamaten61) 2018年10月28日
菊野先生想像通り聡明そうでいながらかつガタイもよいという。来年の学会でまたお話出来るよう研究頑張らねば。
国際バカロレアにおける「言語と文学」「文学」の授業から国語科のあり方を考え直す―教科横断的キー概念(key concepts)・能力にもとづく学習指導を手がかりに―
第1回DP(Diploma Programme=高2・3)における「言語A」を中心に
概念ベースの授業づくり - Senobi https://t.co/pi2FhigddY
— はまてん (@Hamaten61) 2018年10月24日
生活科や総合の研究をしている先生(高校国語の免許をお持ちで1年間非常勤を経験)とお茶の水女子大附属小国語科の先生と今日この話について2時間ほど話す機会を得た。国語科での探究とは何か。概念ベースで複数教材を扱うことも有効かなと。
国語科での探究は、問いを基に文学を読み進める形ならイメージ出来るが話す聞く等のスキル学習とどう結びつくかは難しいという話になった。附属小の先生は「単元学習は探究ではないか?」という質問を受けたことがあるらしい。全てがそうなるというわけではないが、優れた実践は探究へ向かうのかなと。
— はまてん (@Hamaten61) 2018年10月24日
単元を通して付けたい力について教師は明確にビジョンを持っているし、生徒も単元学習を経て自ずとそうした力を付けているが、それと同時に教材に関わる概念についてなんらかの良い変容を促せたらなというのが今の理想。概念は知識が抜けても残るもの。学び方や概念を得るような授業を探究してみたい。
— はまてん (@Hamaten61) 2018年10月24日
こんなことを考えていたことや東京学芸大学中村純子先生にぜひうちの講座に!といわれたことで結局またIBから学ぶことにした。
IB公開講座か国語とICTラウンドテーブルどちらに行くか。#jtsj
— はまてん (@Hamaten61) 2018年10月28日
「言語A」の概要・「言語A:文学」の学習指導(国際基督教大学 半田淳子先生)
先生曰く上の本は研究会の成果としての編著であり、今なおIBについて勉強中だそう。
文学の学習は、人類が日々生きているうえで出合う複雑な営みや不安、喜び、恐怖などを象徴的に表す方法を探究するものである。
文学の探究を通して、自立的に考え、独自性に富んだ、批判的かつ明晰な思考の発達を促す。(『「言語A:文学」指導の手引き』)
IB文学は感性・情緒面の育成が目的ではない。(≠『文学国語』)そのような理由から『文学国語』でどのような作品を扱い、どのように読むかに関心があるそう。
IB文学はテーマがあって授業するのではなく、学習者が自身の視点で作品を読み・解釈する中で抽出される概念の形成を重視するという。ここについては、IBも教師が選択した文学にある程度貫かれた概念は存在するため、それを生徒がどのように考え、どのように表出するかを重視・尊重するといった方が良いかもしれない。
「言語A:言語と文学」の学習指導(元アメリカンスクール・イン・ジャパン 内藤満地子先生)
発表にレジュメがなかったために慌てて箇条書き。文学で育成する力について考えさせられた。以下はその内容である。
「文学」
文学批評の技法の理解使用、独自に批評する力と自分の考えの裏付けをもって構成。
「言語と文学」のみ
言語や文化や文脈(コンテクスト)がテクストをどう決定するか。
「言語と文学」コースのテクストは情報の出典と成り得るものすべて
「言語と文学」に求められるスキルは言語スキル・テクストの詳細分析・視覚的スキルの三つだという。それぞれの能力については要旨集参照。
概念理解を促す問いでどのように探究へと学習者へ導くかが重要と主張する。ここはIB以外でも大いに参考にできる。
作品・作者・文脈・読者から考える
『檸檬』の学習とかは書かれた時代と合わせてデカダンスの文学と読むか、現代的教育的に「語り手」への注目から希望の文学と読むか #jtsj #IB公開講座
— はまてん (@Hamaten61) 2018年10月28日
比較・対比の重視は異なる解釈や意味の再構築が出来る。
EX)天声人語(2011/12/04)とポスターとの比較(絆の意味について論じる)
Dエリクソン(2008)概念理解に重点を置いたカリキュラム(←詳しく知りたい)
概念とは複数の事実や知識に共通する、あるいはそれらを統合する大きな真理認識
内容・スキル・概念が概念理解に重点を置いたカリキュラム(今のところ私が考えている国語科学習カリキュラムの理想形に近い)
都立国際改発祐一郎先生の研究が参考になるそう。
言語A「文学」に埋め込まれた概念・能力―「翻訳文学」を中心に(東京都立国際高等学校 高松美紀先生)
発表の趣旨は言語Aにおいて、どのように概念的理解が埋め込まれているか、それがどのように学習効果をもたらすか、実践を通して明らかにすることであった。「日の名残り」を扱った実践の紹介はあったが、概念についての話が中心という印象だった。
「変化」という概念について示されたことで、他の教科学習との共通点・相違点が見えてきたのが興味深かった。
小論文執筆の中で二つの作品を比較・対比する中で共通点・相違点は生徒が考える。関連付け・比較スキルが求められる。
概念理解は生徒中心であり、教師は発問・スキャフォールディング等ファシリテーターとしての力量が求められる。
IBDPで読む古典―謡曲をテキストとした実践 日本語A 文学HL Plan4(東京学芸大学附属国際中等教育学校 杉本紀子先生)
Part4は自由選択、古典をここで扱うことが多い。評価はプレゼンテーションとディスカッションで行う。
学校図書中学2年国語に能の敦盛、大修館古典B隅田川のみと国語科教科書における能の扱いは非常に少ないといえる。
「能」の意義として時間・場所・空間(舞台)や様式美・叙述の美、テクスト間の関連性を考えるうえでよいということが挙げられる。
事実を問う問いは探究のスキャフォールディングと成り得る。段階を踏まえた問いをどのように組み立てるかないし生徒に作らせるかが重要になる。
DP文学における古典の良さとして、具体的を踏まえて抽象化された観点やテーマを想定しやすいこと、典拠関係や影響関係を見出しやすいこと、修辞の多様さから詩と異なる観点から主題と表現の関係性を考えられること、背景となる時代や社会を考えることで「歴史」や「TOK」と連動させて学ぶことができることが挙げられた。
講座終了後はずっとファンであったsekit先生にご挨拶出来たり、二日連続で院生呑みが出来たりと個人的に充実しておりました。