色褪せぬ名著―井上尚美 『思考力育成の方略―メタ認知・自己学習・言語論理―』雑感
思考力育成への方略―メタ認知・自己学習・言語論理 (21世紀型授業づくり)
- 作者: 井上尚美
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 単行本
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の前のバージョンである
をいま読んでいる。
完全に一致するわけではないが
— 虎哲 (@TigerSophia61) September 11, 2019
この本で言うところの「自問態勢」と私の考える国語科における探究と重なる。
クリティカル・シンキング教育:探究型の思考力と態度を育む (早稲田大学エウプラクシス叢書)
- 作者: 酒井雅子
- 出版社/メーカー: 早稲田大学出版部
- 発売日: 2017/02/01
- メディア: 単行本
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方法が違えど、私が研究したいことと近いことを研究なさっており、ご著書や直接の修論相談で大いに示唆を与えて下さった青国研の大先輩でもある酒井雅子先生も著書の「あとがき」において井上尚美先生の功績の大きさについて述べている。
学部生のうちに読んでおくべきであったと思いつつ、結構共感する考え方があるので紹介していきたい。
論理的思考というものをごく狭く解釈すると、形式的推論、すなわち「形式論理学の規則に従った思考」のことになる(例えば心理学ではこの意味で使っている)。ところが、国語科ではもっと広い意味で使われることが多い。それはどうしてかというと、論理学では意味内容を排除して概念の外延(範囲)だけ
— 虎哲 (@TigerSophia61) September 11, 2019
を問題にするのに対して、国語教育では概念の内包(意味内容)も無視できない、いや、そこにこそ言語を扱う国語科の特色があるという事情による。井上尚美(1998)『思考力育成の方略-メタ認知・自己学習・言語論理-』(49頁)
— 虎哲 (@TigerSophia61) September 11, 2019
今までのもやもやに明確な答えを与えてくれた。修論にも引用するかも。
を読んでいてデューイの論理学にイマイチ共感できない、私の研究に組み込めないなぁ…と考えていた理由が分かった。
私の修論のスタンスは教科横断的探究のために国語で探究というよりも国語科の核となる部分の追求が国語科独自の探究のあり方や教科構造の再発見につながるというところにあるので(書いてないので何とも言えないが)井上のいう「国語科の特色」をより深堀りしていく必要がある。
学部3年時の教育実習で初めて知ったトゥールミン・モデルや直近に授業が迫っているディベートについての言及があり興味深く、先に述べたような「学部生のうちに読んでおくべきであった…」との思いが募る。
探究で採用する論理はやはり非形式論理の方が良いな。たまたま教育実習で指導教官に恵まれ、当時全く知らなかったトゥールミン・モデルを扱った論説の読み比べを研究授業でやっていたからその批判的検討を修論に入れるか。
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月12日
「思考の文法」についてのお勧め本の情報を求めています。
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月12日
essentialismが系統主義、progressivismが経験主義って認識で良いのか?
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月12日
「アメリカの国語教育も、伝統的にessentialismとprogressivismとの対立があり、その両極の間を振子のように揺れている。」『思考力育成への方略―メタ認知・自己学習・言語論理―』(136頁)という一文におけるそれです。直訳だと本質と進歩なので日本の振子でいう系統と経験なのかなと思いました。
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月12日
「最近、「人工知能」の研究が盛んになるにつれて、人間の頭の中の複雑な働きを、ステップごとに分解して考えていこうとする研究が発達してきた。」1998年に書かれた(もしくは1983年に書かれたもとの論文)記述である。人工知能ブームは確かに複数回あったんだなぁと実感。
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月13日
井上尚美先生のいう言語編教科書が「現代の国語」において実現したら「国語科」がかなり豊かになる気がする。「先生の先生」問題はあるけど。スケジュール的に現在進行形だろうが、日本語学の専門家を教科書会社が囲い込めるかが勝負だな。スキルは重要だが、スキルを身に付けるための魅力的な活動を
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月14日
組めるかが教科書作成チームの腕の見せ所。そして高校の先生方がそれを見極める力があるかと。どんな活動でもそのまま実践するのは現実的ではないので、優良な叩き台になるものが望ましい。「 Ⅵ 新・言語教科書待望論」を読んで。
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月14日
こちらも買いっぱなしなのでそろそろ読まないと…。
「認知心理学の知見は、ことばとしては新しいが、内容的には私たちのカンや体験上よく知られていることばかりだといえよう。つまり、科学というものは、しょせん、人間のカンを後づけていくものであり、コンピュータはカンピュータに敵わないのである(ただし、仮説を立て実験的・実証的に裏づけていこ
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月14日
うとするところに科学の価値はあるのである)。」(217頁)
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月14日
カンピュータ、面白い(真顔)。経験則でなんとなく正しいと思っていることを裏付ける認知心理学及び科学の重要性。
国語教育研究者の仕事
「むしろ、昔からの実践に新しい光を当て、理論の肉づけをすることが国語教育研究者の仕事の一つだと考えている。また、実践の中から生じたいろいろな問題を認知心理学者にぶつけて、共同で研究していくことが、国語教育研究者のもう一つの仕事であり、それが、心理学から国語教育へという一方通行では
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月14日
なく、心理学そのものの発達にとってもプラスになることだと信じる。」(218頁)
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月14日
国語教育の発展を支えたい認知心理学者さん、共同研究しよう!
認知心理学者に限らず、研究者はもっと国語教育に貢献すべきということを難波先生は主張しておられるが教師の側が歩み寄ることも必要だろう。コラボできる教員になりたいものだ。大学附属はこうしたことがやりやすいところ(なはず…)
読書メーターの拙感想
【思考力育成への方略―メタ認知・自己学習・言語論理 (国語科授業改革双書)/井上 尚美】刊行から20年以上経つ今も色褪ぬ名著で学部生の頃に読むべきだったと後悔しつつ読んだ。人工知能やメタ認知など… → https://t.co/ob700btQzD #bookmeter
— 虎哲 (@TigerSophia61) 2019年9月14日
タイトルの思考力育成をスルーしがち。増補新版も読みたい!