虎哲の探究

単なる私立校国語科教員の戯言。未熟者による日々研鑽の記録。

【雑感】小森陽一先生最終講義

 講義のタイトルは「戦争の時代と夏目漱石」である。

戦争の時代と夏目漱石

戦争の時代と夏目漱石

 

  2、3週間前に小森陽一先生の最終講義があるとtwitter経由で知り、 ずっと楽しみにしていた。小森陽一先生については学部時代に受けた近代文学の授業で「こゝろ論争」及び小森陽一先生、「『こころ』を生成する心臓」を知り、高校時代に通読して自分の中にあった『こゝろ』テクストが瓦解し、その後改めて読み直したことが記憶に新しい。

 大学院1年前期の近代文学の授業で『こゝろ』に関する文献・通読を取り入れた実践論文を読み漁った。その際に以下の本で扱われた『こゝろ』教科書採録部分に対する問題意識は、後の教科書に影響を与えたものの、依然として三角関係が顕在化するKの告白と自殺をめぐる箇所が中心であり根本的には解決していない、教科書の紙幅の都合上解決し得ないことを知ったのだった。

 

  

 元々は西洋史を専攻したかったそうだが当時学生運動に精を出した影響で成績がカフカだったために専攻が第9希望の国文科になったこと、卒業論文は小学校時代をプラハで過ごしその後も語学学校に通い高い語学力をキープしたロシア語を活かして二葉亭四迷の翻訳文学について研究したこと、教師になるために修士課程に進学したこと(高校世界史の教師になり革命家を育てたい!と思っていたという発言は特に印象的だったがそうならず、国文科の方に進まれたのは二重の意味で幸運であった)とこれだけでもなかなか小森先生という人柄が見えてくる。

 

国語教科書の戦後史 (シリーズ言葉と社会)

国語教科書の戦後史 (シリーズ言葉と社会)

 

 

 国語科教科書には戦争についての教材が必ずある。その扱い方にはデリケートな問題が横たわっているが、国語科の前に教育によって戦争の悲劇を繰り返してはないことはいうまでもないことであろう。

  今回の講義では『こゝろ』『三四郎』『それから』『門』の戦争に関わる叙述を丁寧に読み解かれ、漱石の戦争を忌避する考え方を明らかにするものだった。新聞での連載小説であることを巧みに生かした書き方であるということを私のような浅学にも分かりやすく説いて下さるにはまことに恐れ入った。

夢十夜・草 枕 (集英社文庫)

夢十夜・草 枕 (集英社文庫)

 

 読みたい気持ちの火に油を注ぐ小池先生。

 

「ゆらぎ」の日本文学 (NHKブックス)

「ゆらぎ」の日本文学 (NHKブックス)

 

 

 

ポストコロニアル (思考のフロンティア)

ポストコロニアル (思考のフロンティア)

 

  駒場から活動の拠点を移されるが今後も精力的に活動されるようだし、本が残っている限り小森先生から学ぶ者は今後も増え続ける。私も、また春から某大学国文科に進学が決まった私の元教え子も小森先生の著作を読み、漱石の著作をより深く読む手立てとするだろう。

 

 個人的にとても好きなのであすこま先生・すまう先生の思い出話を載せてこの記事を閉じたい。