第3回概念ベース授業づくり研究会での学び
先日rofu先生にお声かけ頂き参加した概念ベース授業づくり研究会での学びについて共有したい。今回は国語科の先生だけでなく他教科の先生も参加し(東京学芸大学教職大学院)て、コラボ授業やMYP・DPの始め方についての意見交流がなされた。どちらについても当然ながら実践経験がなく、知識も少ないので聞き役に回っていたがこれから先の教員人生で考えるべき問いをたくさんもらった研究会だった。記録を取ってくださったのでそれを拝借しつつ。
お知らせ
・6月2日・3日の全国大学国語教育学会(@茨城大学)にて今回も公開講座が行われる。「国際バカロレアにおける「言語と文学」「文学」の授業から国語科のあり方を考え直す」
・この公開講座に間に合うタイミングで以下の本が出版される。
「探究」と「概念」で学びが変わる! 中学校国語科 国際バカロレアの授業づくり (国語教育選書)
- 作者: 中村純子,関康平
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
- 発売日: 2019/05/23
- メディア: 単行本
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【拡散希望】
— rofu (@rakuichi_kokugo) April 26, 2019
5月に本が出ます❗️
国際バカロレアMYP「言語と文学」について、分かりやすく解説しています。これからの授業づくりのヒントがたくさん詰まった本になっています。ご期待ください!https://t.co/OUI6YcD4H2
自分はIB校で勤務することが恐らくないだろうと思いつつも、概念ベースの授業づくりそのものには大いに関心がある。だからこそ読みたい。
— 虎哲 (@TigerSophia61) April 26, 2019
コラボ授業の作り方
rofu先生の同僚の方が先陣を切って美術の授業とコラボについてお話して下さった。
(概要)
・美術の先生にお願いして、美術館に行く。
・感じたことをどう記述するか、 どう言語化するかという作業を行っている。
・美術の評論を行う。
・「美術の評論をするとは何か?」を考えた後で→美術館に行く。
・感覚的なものを言語にする。
・半分国語、半分美術の授業になる。半分は美術に投げる。
概念ベース授業づくり研究会でジャン=ミシェル・バスキアというアーティストの存在を知った。
— 虎哲 (@TigerSophia61) April 21, 2019
画像検索で数点の作品を見た程度の私はまだ彼の世界観の良さが分からない。彼の作品に惹かれる人々が彼の作品をどのように見ているのかは気になる。
【美術解説】ジャン=ミシェル・バスキア「アメリカで最も重要な新表現主義の画家」 https://t.co/5xKxgpzYqc
— 虎哲 (@TigerSophia61) April 21, 2019
どちらかが先導するのではなく、各々の教科の良さを生かすべく投げるというようなところは非常に参考になった。綿密に打合せしすぎるとコラボ自体が双方の負担になってしまうのだ。
学部時代の先輩も勤務する公立高校の先生は国語と家庭科のコラボについて
(概要)
・他の授業で国語が活かされていない…という問題意識。
・生活に密接した家庭科という授業。
・国語と家庭科(共働きについて考える、沖縄について考える)
・「なぜ沖縄の家にはタンクがあるのか?」を考える授業。
・キーワードを書かせ、図式化する。 その関係性をまとめるにはこんな接続詞がいるよね、 という風に国語を活用していく。
・他教科からも多くのフィードバックをもらえ、 やった意義を感じた。
生徒は予想以上に教科学習と日常とを分けて考えているのかなと考えるようになった。他教科という枠内でも活用できると実感する場が必要なのだ。
社会科の先生は今後実践したい理数科とのコラボ案についてお話していた。
理科とのコラボ
・フランス革命はなぜ起きたか?は割とある授業。
・フランス革命が起きた頃の日本は浅間山噴火があったなど、 気候の関係性に着眼する。フランスでも飢饉に苦しんでいたという事実がある。
・機械の技術発展と戦争の関係性
数学とのコラボ
・ゴシック建築と数学、アーチのなど。
私は門外漢ながら社会科、特に歴史は事象と事象とのつながりを見出すことに面白さがあると思っている。従来の社会科授業も個人的には好きだが、このコラボ案のように科学的事象ともつなげることでより立体的な歴史観を構成できるのではと話を聞きながら思った。
rofu先生は「メディアと科学」というテーマで理科とのコラボ実践を報告された。
・メディアの中で科学がどう使われているか?論じさせる。
例:このグラフは本当に科学的なのか?検証する。
紅茶はインフルエンザに良い。検証する。
・他の人にわかりやすくプレゼンする。
・科学的、非科学的とはどういうことか考える。
メディアから得られる情報は広範にわたる。それらを批判的に捉えよ!と言われてもピンとこない人は多いのではないか。科学的という切り口に焦点を絞り批判的に捉える学習をすることで他の情報に対しても鵜呑みにしない、怪しげな情報に「ん?」と立ち止まるような身体性が得られただろう。
コラボの現実的問題
・評価の仕方。融通が利くかどうか。日本の縦割り意識。
・カリキュラムが壁になっている。
・小学校と比べ、中高だと専門性に分かれてしまうから難しい。
・雑談とかからじゃないとコラボが生まれない…気を使ってしまう。
灘中高では「近代」というテーマを決めて1年間国語・英語・社会が実践を展開したことがあった。このように関連性やテーマ、 方向性を同じにしておくと最終的につながってくる。この実践は国語科井上志音先生が関わっている。いずれ詳細を伺いたい。
「概念を教えるべきなのか?」という話題では生徒の中に再構成されていくのが理想だという意見で一致した。教科ごとに概念の把握の仕方が違う場合があるがあまり強固に合わせようとしなくてもよいのではないかと思った。話にも挙がっていたが「概念は思考のフレーム」なのだ。
IBについてはあまり詳しくないので発言の真意を取り違える恐れがあるためMYP・DPの始め方については割愛して、これは!と思ったものだけ紹介する。
・日本はDP(高2・3、単位修得のスコアが世界の大学進学に活用できる)から取り入れ、MYP(中1から高1)・PYP(日本の初等教育に当たる)と輸入している。
・DPのみの高等学校は高1がDPの学びを導入するためのファンデーションイヤー。
・IBでは先に概念を教えるのがルール。
単なる一条校は学習指導要領で規定されていることをクリアすれば自由な授業が展開できる。国語科で培う学力を付けさせながら「○○とは何か」ということについて考えるような実践も面白そうだ。(し実際にそうした授業はたくさん試みられている)
いずれ以下の本も再読して概念ベースの国語授業はどんな形で実現し得るか探究したい。