虎哲の探究

一介の公立中高国語科教員の戯言。未熟者による日々研鑽の記録。

探究を探究する高校教師たち―第16回高大連携フォーラム(後編①)

  今日は横浜国立大学大学院教育学研究科に進学した同期と久々に再開した。彼のところは同期が3人で演習科目の発表が回ってくるのが早く修士論文どころではないそう。こちらは同期が4人で演習発表の周りは早いがきつくはない。大学院にもいろいろあるんだなと思った。現在は方丈記の研究をしているそうなので手元にあった方丈記実践の資料をお土産として渡し、また元気に再開出来るようにと約束し分かれた。

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  上の記事の続きである。遂に僭越ながら渡邉久暢先生の実践について紹介できる。

 

新学習指導要領の国語に向かって(京都市教育委員会学校指導課副主任指導主事 影山晋之介先生)

 実践発表者渡邉久暢先生の発表の前に新学習指導要領の詳細についてその趣旨を踏まえつつ解説なさった。指導主事の方は文部科学省の方の講習会等に召集されるらしく、現場へ改訂の趣旨をかみ砕いて伝える役割を担っているそう。現場を離れなければいけない指導主事や管理職にネガティブなイメージがあったがこうした方々の下支えがあって改訂の流れが現場に息づくのだと気付かされた。

有難う教職大学院

 2030年の社会を想定やSociety5.0の到来といった新学習指導要領の前提や、ContentsベースからCompetencyベースへという新学習指導要領の基本理念といった話から入り、総則や国語科の新学習指導要領解説をかみ砕いて説明なさった。

 特に「見方・考え方」と学びの過程と資質・能力の関係の説明が今まで受けた説明をうまくまとめたものだと感じた。各教科との見方・考え方を各教科等の習得・活用・探究で働かせる、それによって各教科等の見方・考え方が鍛えられるという循環関係があり、その循環が繰り返されるうちに各教科等で育成すべき資質・能力が高められるというものだった。具体を見ないことには何とも言い難いがこうした三者の関係は念頭に置いておきたい。

 最後に今回の実践発表に関連する影山先生が考える新学習指導要領の指導における課題・留意点に①複数テクストを読む学習活動の指導(教材群の選定)②「主体的・対話的で深い学び」を活性化する教師のファシリテーター的役割(発問の考案)を取り上げ、渡邉先生の実践には見られると繋いだ。

 

「現代の国語」の単元を構想する~新学習指導要領を見据えた「高次の学力」を育む授業展開の可能性~(福井県立若狭高等学校 渡邉久暢先生)

 

 今年3度目の京都に来た目的は渡邉久暢先生の発表を見ることである。

教室における読みのカリキュラム設計

教室における読みのカリキュラム設計

 

 や

http://www.mitene.or.jp/~kkanabe/

で面白い実践を積み重ねられている先生がいると知り、以前からお会いしたいと思っていた。

 渡邉先生は自身や若狭高校国語科チーム全体の実践をさらに良くするため実践を積極的に公開する。「辛口頂戴!」と意見を求める姿が印象的だった。そもそも今回の高大連携教育フォーラムでの発表を渡邉先生が依頼されたのも数年前の京都大学で行われたフォーラムで学生の発表するルーブリックに怒り心頭の目立った集団(若狭高校国語科チーム)がおり、彼らが登壇者に的確な質問をぶつけていた様に影山先生がただならぬものを感じて声をかけ知り合った面白い出会いによるものであった。(発表後影山先生に質問して発覚)嚢中の錐というべきか優れた実践者は自然と見出されるのだなと感動した。ルーブリックについては大阪教育大学池田地区附属学校研究会における八田先生の講演をまとめた以下の記事を参照されたい。

 

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  IBのルーブリックとの混同が一つ「ルーブリック評価」という誤解を現場にもたらしているのかもしれない。今日横浜国立大学院生の同期と話したとき彼はその違いが分かっていた。というか実際に成果物からルーブリックづくりをやっていた。恐るべし。

 発表はスライドを使用し、時折気が合う人(じゃんけんであいこになった人)と活動し合う形式で行われた。スライドを中心に適宜配布資料を参照してまとめていく。

 渡邉先生は本日議論したい問いとして「新教科「現代の国語」において、高次の学力を育むには、どのような単元をデザインすべきか。①どんな力を、②どんな教材・活動で、③どう評価するのか?特に、主体的に学習に取り組む態度をどう育むか」を掲げた。その上で自分たちのやり方を押し付ける目的ではなく、「私の学校の国語科教員チームは、目の前の生徒の様子をよく見てこんな力を培っていくと良いのではないか、という目標を設定し、力をつけるのにふさわしい教材を選び、活動を考え、実践し、彼らの力が付いたかどうかを見るための考査を行おう、と取り組んでいる。今日はより良くするための意見が欲しい。」と発表の趣旨を示した。結論から言えばフロアにいた皆がその実践に圧倒され、建設的な意見があったかという点は微妙なところである。皆が今後こうした単元を考え実践していく中で初めて議論が深まっていくのだろう。もし日本の高等学校の実践者にそのような気概があれば新学習指導要領の理念実現やVUCAな時代を生き抜く生徒を育てる使命という大きな波に乗ることが出来るだろう。

 「なぜ「現代の国語」を検討の対象にするのか」として渡邉先生は「現代の国語」が中教審答申(2016)の「教材の読み取りが指導の中心になることが多く、国語による主体的な表現等が重視された授業が十分に行われていない」「話し合いや論述などの『話すこと・聞くこと』、『書くこと』の領域の学習が十分に行われていない」という指摘から新設された科目であり、それを踏まえたうえで目の前の生徒に合わせた学習目標を措定し、「どのような教材を用いて、どのような学習活動を組織し、どう評価するか」を早急に検討する必要があるからだとしている。

 「高等学校国語科における『目標と指導と評価の一体化』の可能性」として新学習指導要領下において「「知識・技能」だけでなく「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力・人間性」を培うことの重要性が認識されつつある」ことを指摘し、そこから「国語科で培う思考力って何?(学力構造への意識化)」「どんな教材で、どんな学習活動を?(教材・活動の組織化)」「思考力がついたかは、どうしたらわかるの?(目標・評価への意識化)」といった問いへの探究が進むと話を展開する。

 八田幸恵先生が『教育科学国語教育』の2017年8月号に寄せていた「読みの学力モデル試案」を紹介なさった。昨年から定期的に購入していたため(≠定期購読。生協で購入する方が安いため)手元にある。こういうこともあるので雑誌を買い集めているのは便利である。

長くなりそうなので今日はこの辺で勘弁しといてやる。(何様)