虎哲の探究

一介の公立中高国語科教員の戯言。未熟者による日々研鑽の記録。

【授業見学記】お茶の水女子大学附属中学校(ブックカフェ編)

 昨日お茶の水女子大学附属中学校にてブックカフェの授業と自主研究ラウンドテーブルを拝見した。国語科の先生方なら名前を聞いたことがあるであろう渡邉光輝先生が上記の実践を公開してくださったのだ。今回の記事はブックカフェの様子や単元の持つ良さを中心に振り返る。

 

ブックカフェ 

 ブックカフェは自分も実践したいことの一つで、特に中学生がどのような話し合いをするのかが非常に楽しみだった。拝見したクラスの選書は以下の通り。

怪物はささやく』『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』『羊と鋼の森』『君たちはどう生きるか』『穴 HOLES』『あと少し、もう少し』

 中学生が読んで語りたくなるものという選書がなかなか難しかったそうで司書の先生と二人三脚で行ったそうである。私が実践する際に課題になりそうだ(小説を読む経験の深刻な不足…)。

 私は先の本の中で最も読みたいと思っていた『君たちはどう生きるか』の読書会をしているグループに張り付いてみることにした。

 

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

 

  生徒たちの本には多くの付箋がついており、読書会中それを基に何度も本の叙述に帰っていたのが良いなと思った。付箋は4色で青が疑問、緑が伏線、黄が気になる言葉、赤が共感できるところとなっており、読み進めていた時の気持ちを残すことが出来る非常に良い手立てだと思った。

 生徒たちは本文の叙述から時代に注目し、この本が書かれたのはどのような時代だったかPCで調べていた。始めは本とは関係ないところに興味を持ってしまったのかなと思って見ていたが、私の見当違いだったことが明らかになった。本が書かれた時代は戦争に向かっている時期であり、そんな中で「どう生きるか」を問うた著者は反戦主義だったのではないかということに気付いたのだ。

 教科書によっては「こころ」などの文章から近代という時代を読み解こうとする手引きがあり、そのことに対し違和感を抱いていたが、今回の読書会の様子を見て、完全に時代を見る手引きに賛成というわけではないが文学から時代を見るということも面白いかもしれないと考えを改めた。

 読書会では先の気付きのほかに、漫画に対して主題がはっきりしすぎ!や野球の場面の叙述の書き換え、本に出てくるノートについて書くことは残すことだなど様々な興味深い話で盛り上がっていた。

 読書会後生徒たちは渡邉先生の指示に従い、グーグルスプレッドシートに読書会の振り返りを記入していた。話したことを振り返り意味づけることが読書会の価値を知るうえで重要だと感じた。単元の終わりには話し合ったことを参考にレポートを書くという。

【参考】ブックカフェ単元の流れ(配布資料参照)

第1次(1~3時)作品を下読みする(中間テストに本の内容を出題するなど本を読ませる工夫もあり)

第2次(4~6時)読書会に向けての準備(作品の内容確認、話す問いを考える)

第3次(7・8時)第1回読書会「君はこの本どう読んだ?」第2回読書会「この作品の魅力とは?」(本時)

第4次(9時)話し合ったことを参考にレポートを書く

 

 やはり読書会を充実させるためには、途轍もない苦労と緻密に張り巡らせた手引きや単元計画、本の充実が必要なのだと授業後渡邉先生や司書の奥山先生参回の先生方との感想意見交流の場で考えさせられた。

 しかし今回の授業を見てブックカフェに挑戦したいと思わされた。2017年お茶の水大学附属中学校紀要論文(https://kyozai-db.fz.ocha.ac.jp/downloadpdfdisp/56)などを参照し、理論面もしっかり学びたい。