虎哲の探究

一介の公立中高国語科教員の戯言。未熟者による日々研鑽の記録。

日本国語教育学会全国大会1日目の振り返り

当学会会長田近洵一氏の「総括と展望」によれば、振り返りは単にメタ認知を促すものでなく、未来の学びを開く生産性を持つものだそうである。このブログにて振り返りを行い、未来の学びを開く契機としたい。

 

基調提案(鳴島甫氏)

主に『「主体的・対話的で深い学び」を実現する単元学習』という当会の副題について中央教育審議会答申や指導要領を適宜引用しつつ説明なさっていた。『児童生徒一人一人が興味関心を持つ「実の場」作りをし、その中で学習活動がなされるように考えてきた』『単元学習が形式に流されさえしなければ、「主体的・対話的で深い学び」は当然のように実現されてきていたのであり、「なにも今更」という感が否めないのである。』という言葉は、単元学習が「主体的・対話的で深い学び」を実現し得るものであることを端的に示していると思った。

 

『色彩語の秘密をさぐろう』(筑波大学附属小学校 青木伸生先生)

まず、800人ほどの観客を前にして伸び伸びと学習していた筑波大学附属小学校の児童の姿に驚かされた。語彙指導における『色彩語』という切り口の有用さに気づかされた。語彙の量を増やすことだけでなく、もともと持っている語のイメージをより豊かにすることも語彙指導である。学習活動はマッピングによる色のイメージの可視化、過去読んだ文学作品を色彩語で振り返る、色彩語について授業者が論じた文章の読解、詩作、詩のボクシング(二人の児童が自作の詩を朗読し、どちらの作品が良いか全体で判定する活動)と盛り沢山であった。詩を作るなど創作を行うことで色彩語の機能をより深く理解できると思った。協議において甲斐先生が提案していた、色彩語の用例を集め分析する単元も中高において有意義な語彙指導になると思った。

 

『批評の心が生まれたとき』(港区立赤坂中学校 甲斐利恵子先生)

まず、中学生の様々な思いを問いを立てて明確にし、批評文を書くことで形にしていくという単元の設計が見事だと思った。問いを立てて考えることは規模の大小は別にして探究であり、国語科における探究の可能性を見ることができた。本時は一つの班の話し合いを中心に授業が行われた。また、授業の進め方から、全体で一人の問いについて検討することで、問いや批評の進め方に多様な切り口があることを各々が認識し、今後立てる問い及び批評文の質を高めることが出来ると気付かされた。生徒の振り返りにもあったが、一人の視点による批評には偏りがあるため、問う切り口の多様さに気づく協働を当授業のように組み込むことは有効であると思った。批評の語彙として「そもそも」(前提の検討)「確かに」(反対意見の想定)などを取り立てて指導していたのもよいと思った。探究と国語科の関連を考えるうえで、探究的な思考を促す語彙の指導にも注目したいと考えていたので示唆的だった。私も自身の研究の成果を織り込みつつ、ぜひ実践したいと思える授業だった。

 

総括と展望(田近洵一氏)

様々な側面からお話されていたが、「何故単元学習か」という問いに、「actualな学びの主体者として活動させたい」という教師の願いがあったからという一つの答えを示されたのが最も印象的だった。学び手の側からの教育である単元学習が、これからの時代の教育の潮流にも合致するものであり、ひとまず教室において追及すべきものだということを再認識した。

 

二日目は「実践にふれて学びあう」とのことである。

 

hama1046.hatenablog.com

 前回の記事に書いた通りに回り、見識を広めたい。